インシリコ毒性スクリーニングに関するみんなの広場


 

          
 CBI学会に新たに設立されました「計算機毒性学(Computational Toxicology)」研究会は、日本で最初の計算毒性学研究会として、多くの方々の注目を浴びております。

 「計算毒性学」研究会では化合物毒性に関する様々な問題を、研究会に参加された多くの方々と一緒に討論、勉強、情報交換する場の提供を目指します。
 本研究にご興味のある方々は、研究分野、研究内容、業務内容、スキルレベル、その他の様々な違いがあっても特に問題がありません。「計算毒性学」はその特徴から、様々なバックグラウンドを有する方々に集っていただくことが重要です。少しでもご興味がありましたならば「計算毒性学」研究会に参加いただければと思います。
 研究会の活動内容や、詳細なスケジュール等はキックオフミーティング時および以降の会議や皆様からのご意見等を参考に、順次決定いたしまして「計算毒性学」研究会のネットワーク等に報告させていただきます。順次関連情報等は本ブログにても公表させていただきます。

 計算機毒性学研究会に参加ご希望の方は、以下の「計算毒性学研究会設立報告および参加のお願い」をご一読ください。本資料に書いてありますように、参加のご意向を連絡いただければ、手続きさせていただきます。

2012/08/17

「テーラーメードモデリング」の特許が日本で承認されました:About the "Tailor Made Modeling" patent

 

◆ 「テーラーメードモデリング」の特許が日本で承認されました: The patent about "Tailor made modeling" was accepted in Japan



  インシリコスクリーニングを実施する上で最も重要な予測精度を向上させるための基本技術となる「テーラーメードモデリング」が日本で特許として承認されました。 本特許は同時に米国およびEUにも出願されております。 特許化されるのも時間の問題と考えます。

 この「テーラーメードモデリング」は、最新かつ今後のインシリコスクリーニング技術の中核となる技術です。 「テーラーメードモデリング」の最大の特徴は、インシリコスクリーニングを実施する上で最も重要な指標である「予測率」を最大のものとすることです。
 本特許は、従来から実施されてきた多変量解析/パターン認識によるインシリコスクリーニングの流れや手順を180度変換する事で実現される、画期的な技術です。 これが特許として認められたことで、現在も日々進化し続け、ますますその重要性を増しているインシリコスクリーニングの効率向上が実現されます。 今後は、現在よりも極めて多数の化合物(含:仮想化合物)の高速スクリーニングが求められる時代となります。これに伴って、インシリコスクリーニングの予測率の大きさが極めて重要となります。 今回特許が認められた「テーラーメードモデリング」は、まさにこのような要求に答えることの可能な、次世代型インシリコスクリーニング手法となります。

◇ 従来手法によるインシリコスクリーニングとの違いは何でしょうか



 従来からの多変量解析/パターン認識による予測では、予測を行うための判別関数や重回帰式をあらかじめ作成しておき、これを予測対象となる化合物に適用して予測するものでした。このために、予測に用いる判別関数薬理活性重回帰式は汎用的なものが作成され、どんな化合物であってもある程度の正確さで予測できるように設計されてきました。

  しかし、HTS技術やコンビナトリアルケミストリーの発展に伴い、サンプル化合物も急増し、かつ予測対象化合物も実化合物のみならず仮想的な化合物も研究対象となることで、急速にその予測対象化合物のサンプル数も増大してきました。例えば10000化合物をインシリコ上でスクリーニングする場合、90%の予測率があるとしても1000化合物は予測間違いを起こしてしまう事になります。従来手法に頼っている限り、この90%の予測レベルに到達する事すら極めて困難です。

  従来手法による予測に限界があることは良く知られた事実でした。従って、その改良法として以下に示す三種類のアプローチが取られてきました。

1.予測の判別関数や重回帰式の作成に用いるパラメータの改良や新規に追加する
2.サンプル母集団の構成を工夫し、サンプル数を増やす
3.より高機能な多変量解析/パターン認識手法を採用する(例:線形分類から非線形分類へ)

 しかし、上記の様々な手法の改良や追加レベルでの機能改良では、従来のデータ解析の形という範疇から大きく離れておらず、結果として高い予測率を達成する事は出来ませんでした。
 このような局面を打開する究極の予測手法として「テーラーメードモデリング」が開発されました。

  「テーラーメードモデリング」は従来から実施されてきた多変量解析/パターン認識による予測の流れを根本から変換します。

従来手法 => 与えられたサンプルを用いて、あらかじめ予測
          モデル(判別関数や重回帰式)作成しておく。
          これを用いて、予測対象サンプルの予測を行な 
          う。

新手法(「テーラーメードモデリング」) => 
           予測対象サンプルごとに、予測に最適な予測
           モデル(判別関数や重回帰式)を新規に作成
           し、これを用いて予測を行う。

*予測対象化合物毎に最適な予測を実現する予測モデル(判別関数や重回帰式等)を構築するので、この手法に「テーラーメードモデリング」という名前を付けました。